作業主任者が守る“未来の健康”

金属アーク溶接と予防措置

建災防(建設業労働災害防止協会)の技能講習にて、
「金属アーク溶接等 作業主任者限定技能講習」の中の、
医師が担当するパートを1時間だけ、講義させていただきました。

テーマは、
「健康障害・予防措置・作業主任者の役割」

少し地味なテーマかもしれませんが、実はとても大事な内容です。

溶接作業に潜む見えないリスク

金属アーク溶接では、「溶接ヒューム」と呼ばれる微細な煙が出ます。
この中には、一酸化炭素や酸素を奪うガス、さらにはマンガンなどの有害金属も含まれています。

急性のリスク(すぐに影響が出るもの)

  • 強い光による「電気性眼炎」や「青光障害」

  • 酸欠や中毒による意識障害、最悪の場合は命の危険も

こうしたリスクがある現場では、通常のマスクでは不十分で、
送気マスクや電動ファン付き保護具などが必要になることもあります。

慢性的なリスク(じわじわ蓄積するもの)

  • 吸い込むことで、神経や肺にじわじわダメージがたまり、

  • 数年〜十数年後に「パーキンソン病のような症状」や「肺がん」などが起きることも

なぜ、作業主任者がカギを握るのか?

建設現場では、元方事業者が全体の安全を管理していますが、
現場で日々、作業者の体を守っているのは作業主任者です。

たとえば、

  • 「この現場ではどんな保護具が必要か?」

  • 「今の換気は足りているか?」

  • 「作業者の体調は大丈夫か?」

といったことを、一つひとつ判断し、指導していくのが作業主任者の役目です。

「今、大丈夫」ではなく「未来も大丈夫」を考える

ヒュームを吸い込んだからといって、
その場で具合が悪くなることは少ないかもしれません。

でも、それが長く続けば、
将来、命や生活にかかわるような病気につながる可能性があります。

だからこそ大切なのが、
「未来の健康を守るために、今、正しく行う」という視点。

作業主任者の「ちょっとした声かけ」や「注意喚起」が、
10年後、20年後の健康を左右する。
私はそのことを、一番伝えたかったのです。

このあとの講義は…

私のあとは、労働衛生コンサルタント会の横溝浩先生が登壇。
「設備管理・環境評価・保護具等」について、より実践的なお話をされました。

ちなみに私も今回は、労コン会の“赤ジャケット”を着て登壇しています。

おわりに

建設現場で働く方々の健康は、
今日の作業だけでなく、未来の生活そのものにも関わってきます。

作業主任者の皆さんの役割は、とても大きな意味を持っています。
その想いを少しでも後押しできるよう、これからも現場での支援を続けていきたいと思います。