リスクアセスメント:ハザードとリスクとは?

ハザードとリスク、
そしてリスクアセスメントという⾔葉を
ご存知でしょうか?

先日、ある農業関係の事業所へ伺った際に、
農業・畜産の業務の中に、家畜や特殊な農業機器、
⼭中の屋外作業ゆえの様々な危険性と、
それによる災害や怪我などのリスクが
多数存在していることを、改めて気づかされ、
少しふり返って、整理しようと思いました。

それらの危険性・有害性をきちんと特定し、
それがケガや事故、病気につながる可能性を⾒積り、
それらの可能性を低減するため、
優先順位を決めて対策を進める、
一連の流れを“リスクアセスメント“と言いますが、
労災防⽌には必須なのです。

※ハザードとリスク
”ハザード”の定義は、
建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、
または作業⾏動その他業務に起因する「危険性または有害性」
のことです。
”リスク”の定義は、今後、危険性・有害性(ハザード)が
⽣じるおそれのある
「可能性と度合い」のことです。

つまり、ハザードがあっても必ずしもそれが⽣じるわけではない
(不確実性)と考えられます。

わかりやすい例として、”ライオンの例”がよく挙げられます。

ライオンは危険性を持っているハザードです。
近くに⼈がいなければ⼈が襲われる⼼配はありませんが、
ライオンの近くに⼈がいることで、
⼈がライオンに襲われる災害が起きてしまう可能性があり、
それをリスクと呼びます。

ハザードがリスクになる関係性でもあるので、
明確に区別して理解する必要があります。

そして、そのリスク低減措置の考え⽅の順位に、
2つの視点があります。

1つめは、
【本質的対策→⼯学的対策→管理的対策→保護具】
という順位です。

1.本質的対策:
ライオンをネコに変える
(そもそも危険作業の廃⽌・変更。
危険有害性のより低い材料への代替、
より安全な施⼯⽅法への変更)

2.⼯学的対策:
オリを作る
(ガード、インターロック、安全装置、局所排気装置等)

3.管理的対策:
ライオンの扱い⽅・オリの⼊り⽅マニュアル整備
(⽴ち⼊り禁⽌、ばく露管理、教育訓練等)

4.個⼈⽤保護具:
鎧を着てオリに⼊る
(呼吸⽤保護具、あくまで1〜3の措置によって除去・低減
されなかったリスクに対して実施するものに限られる)

2つめは、
労働衛⽣の3管理
【作業環境管理→作業管理→健康管理】
という順位に基づく視点です。

1.作業環境管理:
作業環境・設備に関し(作業環境測定等により)、
リスクの把握をし、それの除去・低減に努める。

2.作業管理:
1で残ったリスクについて、作業時間、⼿順、姿勢、保護具の
適正使⽤、衛⽣教育などにより、リスク除去・低減に努める。

3.健康管理:
さらに作業者がばく露されている状況を特殊健康診断などで把握し、
適正配置に活かすなどにより、災害や疾病を防⽌する。

労災を減らしたくても、単に
「不注意が原因だから、なるべく注意しましょう!」
といった、感覚的・短絡的な対策(というより”掛け声”、”要望”)で
終わってしまい、労災発⽣件数は全く変わらない、
なんていう事が少なくありません。

そのハザードとリスクの明確な区別、
リスクの評価・⾒積り、低減措置の優先順位、
低減措置の視点などが、しっかりわかっていないと、
それらが持続することで、いずれ重⼤災害や死亡災害に
繋がりかねません。
そのために、実はこのような”考え⽅”を⾝につけること
が、⾮常に重要なのです。

リスクアセスメントという考え⽅、スタンスは、
熱中症予防対策やメンタルヘルス対策にも、実は当てはまりますが、
それについては、またの機会に。