50人未満の事業所にもストレスチェック義務化
産業医の選任義務が50人から30人への引き下げ検討案は、
様々な事情で頓挫しているようですが、こちらが先に決まったようです。
実際の導入は数年後を想定している、とのことですが。
現在、地域産業保険センター(以下、地産保)の登録医として、
50人未満の事業所の以下のような様々な相談に対応しています。
①健診判定(個人票へ就業可否の押印や2次受診勧奨用の書面作成)
②ストレスチェックの高ストレス者面接
③メンタル不調者・休職者・問題社員への対応方法
④化学物質の自律管理について
⑤職場巡視
⑥安全衛生大会で講演
アドバイスや課題解決などをご縁に、努力義務にも関わらず
産業医としてご依頼されるケースがあり、
そういう企業は本当に困っていますし、
やる気があるので関わる事自体が楽しいです。
ただ、それもごく一部であり、大半は上の①②③すべてについて
正しい情報さえなく、指摘してもそれを導入する余裕がないため、
「現状のままで」という場合が少なくありません。
実は、①などは、50人未満の場合も法的には義務ですが、
労働基準監督署への報告義務も罰則もないためか、
健診を受けただけ(医学判定だけ)で終わっているケースが
非常に多いです。
※ ただし、そのハイリスク者が倒れたり最悪亡くなられた場合は、
「なぜ健診結果を把握していたのに強制的にでも受診なり治療させなかったのか?」
という予見可能性や結果回避義務を問われたり、安全配慮義務違反による損害賠償、
高額の損失リスクや企業存続リスクなどが横たわっているのですが、
このような現実を直視するのは難しい事です。
稀に監督署から指摘を受けて、駆け込み相談を頂く事はありますが。
検討会では、外部機関への委託を推奨されているものの、
そのコストや手間などの負担が増えることにもなりますので、
慎重な議論が必要だと思います。
地産保では、②も無料で対応していますが、
現実的には年に1回、最大でも2回程度のサービス提供ですので、
「健診判定を1社1回のみ高ストレス者対応はクリニック受診を」
となってしまうケースが少なくないと推測します。
そもそもセンターの利用率も低いので、登録産業医の数だけで
地産保等に期待し過ぎるのも現実的ではないのではないでしょうか。
現場を知る者としては、このような現況で全事業所のメンタル体制の強化などは、
正直かなり無理があるな、とも感じています。
それ以前に、職場改善において、
ストレスチェックの実施による有効活用ができているのか?、
この検査のみで、”そもそも不調者が発生しない職場”ができるのか?
などの根本的課題もあります。
ただ、こうしたマクロ視点とは別に、
このような行政の動きや法令改正により、
「小さな会社に健康管理など無関係、無関心、不可能…」と
なってしまっている現状に少し風穴が開くかもしれません。
少なくとも、周囲からの相談件数は増えると予想していますし、
そういう機会が増えれば、”気づき”のチャンスでもあると、
思います。